今通所している中間施設(アルコール依存症から回復して社会復帰できるように支援していく施設)への通所者が突然増えた。あっという間に5~6人入ってきた。病院を退院してすぐの仲間は大抵ぼ~っとしていて何がなにやらわからないまま人の話も聞けないで座っている。でも仕方ないんだ、本当にアルコールという奴は徹底的に身体も心も壊していく薬物だから。現実逃避の手段から現実が直視できなくなって逃避している泥酔状態での妄想を現実と思い込む倒錯した意識状態から、身体からアルコールを抜かれて(解毒点滴という穏やかな方法もあり、ガッチャン部屋という乱暴な方法もありだが)、実際のところ「浦島太郎」状態なのだから。はっきりしている記憶は酒が酷くなる前の「古きよき時代」だけど鏡を見ると確実に老けて、昔自分が自分に抱いていたイメージとはかけ離れた表情をなくした自分が映っている。一体いつの間にこんなになったんだ・・・訳がわからないはずである。
身体にもあちこちダメージが自覚されてくる。最後救急車で病院に運ばれた仲間たちは、最初は歩くこともおぼつかない。ロボコンに出場しているロボットの方がずっとましって状態。足腰の痛み、血液数値の異常さ(栄養失調の後遺症によるカリウム、ナトリウムなどの欠乏や痛風など)歯もボロボロが多い。大体酒を飲み続けている時は歯を磨くなんてしないし、歯が痛んだら自分で無理やり抜いたりしてしまうくらいだったんだから。
話ができるようになるまでに二週間から1カ月、通院治療で効果が出てきて体の故障が回復してくるのが2ヶ月~3ヶ月、ミーティングで人の話を聞けるようになるには早くて1ヶ月、中には3ヶ月くらいかかるなかまもいる。ミーティングのテーマを理解してテーマに沿った話ができるようになるのには半年くらいかかる。自分のおかれている状況や自分の身の回りのことを自覚できるようになるのもこのくらいかかる。一滴の酒も飲んでいなくてもこうだ。アルコールというものの威力、脅威、恐るべし。
そして違い探しがあって、あら捜しがあって、夜のAAミーティングの棚卸が始まって、そこから本当の違いが出てくる。忠実にAAプログラムを進んでいくなかまと適当にさぼりながら体裁を繕っていくなかまと。「飲まなければ生きる、飲めば死ぬ」単純なことなんだが、飲まないためにはミーティングに出続けること。それがすなわち「生きる」ことを選ぶということだと思う。
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