2008年12月26日金曜日

正しい「ものさし」の使い方

 「ものさし」はものの長さを測る目盛りの付いた棒です。でも、AAではよく「自分のものさしで物事を計るな」と言われます。なぜならアルコール依存症の人間は酒の入ったグラスの底から物を見るので「現実」が歪んでぼやけてしまい、自分の勝手な思い込みで決め付けてしまうからなのです。大切なのは自分の身に起きてきた事実を事実として受け止めて、自分の思い込みの特徴=弱点をつかみ、自分の勝手な思い込みの世界から脱出していくようにしなければなりません。
 この「アルコール依存症者のものさし」は自分に都合のいいことには小さな目盛りがいっぱい付いていて、自分に都合の悪いことには大きな目盛りがまばらに付いています。そしてさらにものさし自体も曲がっていて本人はまっすぐ当てているつもりでも実際には歪んでしまっていることもあるのです。特に自分に都合の悪いことについてはものさしが触れないようにちょこっと当てて、大きな目盛りで「こんな程度だよ」と自己正当化するのです。そして自分に都合のいいことについてはこれ見よがしにど~んと小さい目盛りで「こんなにやったんだぜ」と自慢するのです。
 高慢で自己中、それがアルコール依存症者の特徴です。高慢だから反抗的です。他人から「こうしろ、ああしなさい」と言われるのには我慢ができません、でも自分は他人に「こうしろ、ああしなさい」と言うのは大好きです。おだてられれば木に登るし、自分が世界で一番偉いなんて思い込むのです。
 酒を止めても考え方が自動的に変わるものではないのです。一時変わってもすぐに元に戻るし、そうなると以前よりもっと酷くなるのです。
 持続的に自分の生き方、考え方を変えていく訓練が必要です。でもそれは健常者の教育では不可能なのです。同じ病気の者たちが、互いに自分のことだけを話す。自分で自分を語る。仲間が話すのを聞く。その繰り返しの中で、「あいつ狂ってるなぁ、そんなことあり得ないじゃない」と思いながら、時々自分も同じようなことをしていたことを思い出し自分に「気づき」というものをもらうのです。
 同じように自分が語る自分の話から他の仲間が得られることもあるのです。だから「与えるから受けとる」のです。この場所がミーティングです。自分の目盛りの確認場所なのです。自分では健常者になったようなつもりでいる仲間もいますが、そういう仲間が正直な話をすると案外結構狂っていたりするのです。この病気は完治はしません、いつでも死と向かい合っているんです。

 飲まないで生きるか、飲んで死ぬか だから飲まない今日一日のためにミーティングに行くのです。

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